美味しいぶどうを育てるために愛情を注いでいるのに、なぜか葉の色が薄かったり、実の付きが悪かったり…そんな悩みはありませんか。
その原因は、もしかしたら「ぶどうの肥料不足」かもしれません。肥料と一言でいっても、その種類やおすすめの製品、適切な肥料のやり方は様々です。
また、良かれと思ってやったことが肥料過多につながることもあります。特に、甘くする肥料の施肥時期や、油かす、鶏糞といった有機肥料の使い方、土壌改良のための苦土石灰の時期、そしてマグネシウム欠乏対策など、考えるべき点は多岐にわたります。
この記事では、ぶどう栽培で直面する肥料に関するあらゆる疑問を解消し、あなたのぶどう作りを成功に導くための知識を網羅的に解説します。
記事のポイント
- ぶどうの肥料不足や過多によって引き起こされる具体的な症状
- ぶどうの成長段階に合わせた年間を通した肥料の施肥時期
- 化学肥料と有機肥料の正しい使い分けと、それぞれのメリット・デメリット
- 目的別(甘くしたい、土壌を改良したい等)におすすめの肥料と使い方
ぶどうの肥料不足が起こる原因と基本対策
- ぶどう肥料の主な種類と特徴
- 効果的なぶどうへの肥料のやり方
- ぶどうの適切な施肥時期はいつか
- 逆効果になるぶどうの肥料過多とは
- 葉に出るサインとマグネシウム欠乏対策
ぶどう肥料の主な種類と特徴
ぶどうの栽培で使われる肥料は、大きく分けて「化学肥料」と「有機肥料」の2種類に分類できます。それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが、健全なぶどうを育てるための第一歩となります。
化学肥料は、鉱物などの無機物を原料として化学的に合成された肥料です。成分が明確で、植物がすぐに吸収できる形で栄養を供給できるため、即効性が高いのが最大の利点です。肥料不足のサインが見られた際に、迅速な効果が期待できます。一方、同じ成分の化学肥料を長期間使い続けると、土壌の微生物バランスが崩れたり、土が硬くなったりする可能性があります。また、過剰に与えると根を傷める「肥料焼け」を起こしやすいという注意点も考慮しなくてはなりません。
有機肥料は、動物の糞や植物の油かすなどを原料とした、自然由来の肥料を指します。この肥料は、土の中の微生物によって分解されてから植物に吸収されるため、効果は化学肥料に比べてゆっくりと現れます。しかし、土壌の微生物を活性化させ、ふかふかで水はけの良い土壌環境を作る「土壌改良効果」が期待できるのが大きなメリットです。長期的に見て、ぶどうの木が育ちやすい豊かな土壌を育むことにつながります。
これらの特性をまとめたものが以下の表です。
種類 | メリット | デメリット・注意点 |
---|---|---|
化学肥料 | ・栄養成分が明確で即効性が高い・特定の栄養素をピンポイントで補給できる・臭いが少なく、扱いやすい | ・土壌が硬くなる可能性がある・与えすぎると肥料焼けを起こしやすい・効果の持続期間が短いものが多い |
有機肥料 | ・土壌改良効果があり、土がふかふかになる・効果がゆっくり長く持続する・微生物の多様性を高める | ・効果が現れるまでに時間がかかる・成分量が製品によって異なり、不安定な場合がある・特有の臭いや、虫が発生することがある |
このように、どちらか一方が優れているというわけではありません。それぞれの長所と短所を理解した上で、栽培の目的や土壌の状態に応じて、これらを組み合わせて使用することが理想的な使い方と考えられます。
効果的なぶどうへの肥料のやり方
ぶどうへの肥料のやり方は、ただ単に与えれば良いというものではなく、タイミングと方法が非常に大切です。主に、植え付け時に土壌に混ぜ込む「元肥(もとごえ)」と、生育の状況に応じて追加で与える「追肥(ついひ)」の2つの方法があります。
元肥のやり方
元肥は、ぶどうの木が一年間を通じて健全に成長していくための基礎となる栄養を補給する目的で行います。特に、これから長期間同じ場所で育つぶどうにとって、土台となる土作りは極めて重要です。
元肥には、効果がゆっくりと長く続く有機肥料や、緩効性の化学肥料が適しています。植え付けの1ヶ月ほど前に、掘り上げた土に堆肥や腐葉土、そして元肥となる肥料をよく混ぜ込み、土を寝かせておくのが理想的です。施肥量は、植える場所の土壌の肥沃度や、使用する肥料の種類によって異なりますが、肥料のパッケージに記載されている使用量を基準に調整します。肥料が直接根に触れると根焼けの原因になるため、根の真下には肥料を置かず、根の周囲の土に混ぜ込むように心がけてください。
追肥のやり方
追肥は、ぶどうの木の成長段階に合わせて、不足しがちな栄養素を補うために行います。ぶどうの生育ステージによって必要とされる栄養素は変化するため、それに合わせた肥料を選ぶのが鍵となります。
例えば、新しい枝や葉が成長する春先には窒素分を多く含む肥料を、果実が大きくなり始める時期には実の品質を高めるリン酸やカリウムを多く含む肥料を与えます。追肥は、木の根元から少し離れた、枝の先端の真下あたりに施すのが効果的です。このあたりには、栄養を吸収する役割を持つ細い根(細根)が多く集まっているためです。肥料を円状にまき、軽く土と混ぜ合わせることで、効率よく栄養を吸収させることができます。液体肥料を使用する場合は、規定の倍率に薄めてから、水やりと同じように根元に与えます。
ぶどうの適切な施肥時期はいつか
ぶどうの栽培成功は、年間を通した計画的な施肥スケジュールにかかっています。ぶどうの木は、季節ごとに異なる栄養を必要とするため、それぞれの成長ステージに合わせた施肥が求められます。
一般的に、ぶどうの施肥時期は大きく分けて年に3回あります。
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お礼肥(秋肥):10月~11月頃 収穫後、ぶどうの木は来年の成長のために栄養を蓄え始めます。この時期に施す肥料を「お礼肥」と呼び、一年間果実を実らせてくれた木への感謝と、消耗した体力を回復させる目的があります。ここでは、土壌改良効果も期待できる堆肥や油かすなどの有機質肥料や、ゆっくり効く緩効性化成肥料を中心に与えるのが一般的です。これにより、来春の力強い芽吹きのためのエネルギーを蓄えさせます。
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元肥(春肥):2月~3月頃 ぶどうの木が休眠から覚め、活動を始める前の時期に施すのが元肥です。前述の通り、これは一年間の成長の土台となる肥料です。この時期には、窒素・リン酸・カリウムがバランス良く含まれた肥料を与え、春からの活発な成長をサポートします。
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追肥(夏肥):5月~7月頃 新梢が伸び、果実が急速に大きくなるこの時期は、ぶどうの木が最も栄養を必要とします。果実の品質や糖度を向上させるために、リン酸やカリウムを主体とした肥料を追肥として与えるのが効果的です。ただし、この時期に窒素分が多すぎると、葉や蔓ばかりが茂る「つるボケ」状態になり、実の品質が低下する原因となるため注意が必要です。
以下に、年間の施肥スケジュールの例をまとめます。
時期 | 肥料の種類 | 主な目的 |
---|---|---|
10月~11月 | お礼肥 | 樹勢の回復、来季への栄養貯蔵 |
2月~3月 | 元肥(春肥) | 1年間の生育の基礎となる栄養補給 |
5月~7月 | 追肥(夏肥) | 新梢の充実、果実の肥大・品質向上 |
このスケジュールはあくまで一般的な目安です。お住まいの地域の気候や、ぶどうの品種、樹齢によって最適なタイミングは異なりますので、ご自身のぶどうの木の様子をよく観察しながら調整することが大切です。
逆効果になるぶどうの肥料過多とは
ぶどうを元気に育てたいという思いから、つい肥料を多く与えすぎてしまうことがあります。しかし、肥料の与えすぎ、すなわち「肥料過多」は、不足する以上にぶどうの木に深刻なダメージを与える可能性があるため、細心の注意が必要です。
特に問題となりやすいのが「窒素過多」です。窒素は葉や茎の成長を促すために不可欠な栄養素ですが、過剰になると葉ばかりが青々と大きく茂り、肝心の花や実が付きにくくなる「つるボケ」という現象を引き起こします。また、植物の組織が軟弱になるため、うどんこ病や灰色かび病などの病気にかかりやすくなったり、アブラムシなどの害虫を呼び寄せやすくなったりするリスクも高まります。
さらに、土壌中の肥料濃度が過剰に高くなると、根の浸透圧のバランスが崩れ、根が水分を吸収できなくなる「肥料焼け」を起こします。肥料焼けを起こした根は黒く変色し、ひどい場合には木全体が枯れてしまうこともあります。
肥料過多のサインが見られた場合の対処法としては、まずそれ以上の施肥を直ちに中止します。そして、土壌中の過剰な肥料成分を洗い流すために、大量の水やりを行うことが有効です。鉢植えの場合は、鉢底から水が勢いよく流れ出るまでたっぷりと水を与えます。地植えの場合も、数回に分けてじっくりと水が染み込むように水やりを繰り返します。
肥料は「たくさん与えれば育つ」というものではなく、「適切な量を適切な時期に与える」ことが何よりも肝心です。施肥の際は、必ず製品の規定量を守り、木の大きさや生育状況をよく観察しながら加減することを心がけてください。
葉に出るサインとマグネシウム欠乏対策
ぶどうの葉は、健康状態を示すバロメーターの役割を果たします。葉の色や形に現れる変化は、特定の栄養素が不足しているサインであることが多く、中でも「マグネシウム欠乏」は比較的見られやすい症状の一つです。
マグネシウムは、葉の緑色の素である「葉緑素(クロロフィル)」を構成する中心的な成分です。そのため、マグネシウムが不足すると、葉緑素が正常に作られなくなり、葉に特徴的な症状が現れます。具体的には、葉の縁や葉脈の間が黄色く変色し始め、緑色の葉脈がくっきりと浮き出て見えるようになります。症状が進行すると、黄化した部分が褐色に変化し、枯れてしまうこともあります。この症状は、一般的に日当たりの良い場所にある、下の古い葉から現れ始める傾向があります。
マグネシウム欠乏は、果実の糖度低下や生育不良に直結するため、早期の対処が必要です。対策としては、マグネシウムを含む肥料を施用します。土壌に施す場合は、硫酸マグネシウム(商品名:「エプソムソルト」など)や、苦土石灰を利用するのが一般的です。
しかし、土壌に施した肥料が根から吸収されて効果が現れるまでには時間がかかります。より即効性を求める場合は、「葉面散布」が有効です。これは、マグネシウムを含む液体肥料を規定の濃度に薄め、スプレーボトルなどを使って葉の裏表に直接散布する方法です。葉から直接栄養を吸収させることができるため、迅速な回復が期待できます。市販の液体肥料の中には、住友化学園芸の「マイガーデン液体肥料」のように、マグネシウムをはじめとする微量要素が含まれているものもあります。
マグネシウム欠乏は、カリウムを過剰に与えた場合に発生しやすくなることも知られています。カリウムとマグネシウムは、根からの吸収において競合する関係にあるため、カリウムが多すぎるとマグネシウムの吸収が阻害されてしまうのです。したがって、バランスの取れた施肥を日頃から心がけることが、根本的な予防策となります。
ぶどうの肥料不足を解消する肥料選び
- 初心者にもおすすめのぶどう肥料
- ぶどうを甘くする肥料の選び方
- 有機肥料の鶏糞を上手に使うコツ
- 土壌を豊かにする油かすの効果
- 土壌改良に最適な苦土石灰の時期
初心者にもおすすめのぶどう肥料
ぶどう栽培を始めたばかりの方にとって、多種多様な肥料の中から適切なものを選ぶのは難しいと感じるかもしれません。もし肥料選びに迷ったら、まずは「バランスの取れた緩効性化成肥料」を選ぶことをおすすめします。
緩効性化成肥料とは、効果がゆっくりと長く持続するように加工された化学肥料です。一度施せば数ヶ月間効果が続くため、頻繁に追肥をする手間が省けます。また、肥料の成分が急激に溶け出すことがないため、肥料焼けのリスクが少なく、初心者の方でも安心して使用できます。
選ぶ際のポイントは、パッケージに表示されている窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)の比率です。「N-P-K = 8-8-8」や「10-10-10」のように、各成分が均等に含まれているものが、多くの場面で使いやすく汎用性が高いと言えます。特に、IB(イソブチルアルデヒド)化成肥料は、土壌中の水分によってゆっくりと分解されるため、効果の持続期間が長く、元肥や追肥として幅広く利用できます。具体的な商品としては、ジェイカムアグリの「IB化SSE1号」などが多くの園芸愛好家や農家に利用されています。
また、有機栽培に挑戦したいけれど、複数の肥料を配合するのは難しそうだと感じる方には、鶏糞や油かすなどの有機物を主原料として作られた「ペレット状の有機配合肥料」が便利です。これらは必要な成分がバランス良く配合されている上に、ペレット状で臭いも少なく扱いやすいのが特徴です。
いずれの肥料を使う場合でも、最も大切なのは、製品のパッケージに書かれている使用方法や量を守ることです。最初は規定量から始め、ぶどうの木の生育状況を観察しながら、少しずつ量を調整していくのが失敗の少ない方法と考えられます。
ぶどうを甘くする肥料の選び方
収穫するぶどうの甘さを最大限に引き出すためには、特定の栄養素を適切な時期に与えることが鍵となります。ぶどうの糖度向上に特に大きな影響を与えるのが、「カリウム(K)」です。
カリウムは、植物が光合成によって作り出した糖分を、葉から果実へと効率よく運ぶ働きを担っています。そのため、果実が大きくなり、成熟していく段階でカリウムが十分に供給されると、果実内に糖分がしっかりと蓄積され、甘くて美味しいぶどうになります。このことから、カリウムは「実肥(みごえ)」とも呼ばれています。
ぶどうを甘くするための追肥は、果実が色づき始める少し前の、肥大期(6月~7月頃)に行うのが最も効果的です。この時期に、カリウム成分の割合が高い肥料を選んで施します。
具体的な肥料としては、「硫酸カリウム」が代表的です。これはカリウム成分のみを含む単肥で、即効性があり、作物の品質向上によく用いられます。また、リン酸とカリウムを主体とした「P-K肥料」も果実の成熟を促すのに適しています。
ただし、カリウムだけを過剰に与えるのは避けるべきです。前述の通り、カリウムはマグネシウムやカルシウムといった他の重要な栄養素の吸収を阻害することがあります。これらの要素が不足すると、生理障害を引き起こし、かえってぶどうの品質を損なうことになりかねません。あくまで、窒素・リン酸・カリウムの三大要素のバランスを基本とし、その上で果実の成熟期にカリウムを重点的に補給するという考え方が大切です。
有機肥料の鶏糞を上手に使うコツ
鶏糞は、比較的安価で手に入りやすく、窒素やリン酸を豊富に含むため、古くから利用されてきた代表的な有機肥料です。正しく使えば、ぶどうの生育を力強くサポートしてくれますが、いくつか知っておくべき注意点があります。
まず、鶏糞には「発酵済み鶏糞」と「未発酵鶏糞(乾燥鶏糞)」の2種類があることを理解しておく必要があります。園芸用として市販されているものの多くは、高温で発酵処理された「発酵済み鶏糞」です。こちらは臭いも少なく、有害な菌や雑草の種子が死滅しているため、初心者でも比較的安全に利用できます。
一方で、「未発酵鶏糞」は、発酵過程でガス(アンモニアガス)が発生し、植物の根を傷める危険性があります。また、病原菌や害虫の卵が含まれている可能性も否定できません。もし未発酵のものを使用する場合は、直接畑に施すのではなく、堆肥などと混ぜて一度完熟させてから使うのが原則です。
鶏糞を施す際のコツは、根に直接触れないようにすることです。特に元肥として使う場合は、植え穴の底に施すのではなく、木の周囲の土壌に混ぜ込むようにします。追肥で使う場合も、幹の根元から少し離れた場所に施し、土と軽く混ぜ合わせましょう。
鶏糞はアルカリ性を示すため、長期間にわたって多量に使い続けると土壌がアルカリ性に傾きすぎる可能性があります。ぶどうは弱酸性の土壌を好むため、年に1回、土壌の状態を確認しながら適量を使用することが望ましいです。他の有機肥料や化学肥料と組み合わせながら、バランス良く土作りを行うことが、鶏糞を上手に活用するポイントと言えます。
土壌を豊かにする油かすの効果
油かすは、菜種や大豆などから油を搾り取った後の残りかすを利用した、代表的な有機質肥料です。特に窒素分を豊富に含んでおり、その効果がゆっくりと長く続くため、植物をじっくりと育てるのに適しています。
油かすを土に施すと、土壌中の微生物のエサとなり、その活動を活発にします。微生物が活発に働くことで、土の団粒化が促進され、水はけと水持ちのバランスが良い、ふかふかの土壌が育まれます。このように、植物への栄養補給だけでなく、土壌そのものを豊かにする効果が期待できるのが、油かすの大きな魅力です。ぶどうのような永年性の果樹にとっては、長期的に健全な生育環境を維持する上で非常に有効な資材となります。
ただし、油かすの使用にはいくつかの注意点もあります。油かすは発酵する過程で特有の臭いを放つため、ベランダなどでのプランター栽培では気になる場合があります。また、この臭いに引き寄せられて、コバエなどの虫が発生したり、カビが生えたりすることもあります。これらの問題を避けるためには、油かすを土の表面に置くのではなく、土の中にしっかりと混ぜ込むことが大切です。
市販されている油かすには、発酵済みのものや、他の有機肥料と配合されてペレット状に加工されたものもあります。これらの製品は、臭いや虫の発生が比較的抑えられており、初心者でも扱いやすいためおすすめです。油かすは、特に元肥やお礼肥として、じっくりと土作りをしたい場合にその真価を発揮する肥料です。
土壌改良に最適な苦土石灰の時期
苦土石灰(くどせっかい)は、その名の通り「苦土(マグネシウム)」と「石灰(カルシウム)」を主成分とする土壌改良資材です。多くの日本の土壌は、雨によってカルシウムなどが流され、酸性に傾きがちです。苦土石灰には、この酸性に傾いた土壌を、多くの植物が好む弱酸性~中性に近づける「pH調整効果」があります。
ぶどうも、pH5.5~6.5程度の弱酸性の土壌で最も健全に生育します。土壌が酸性に強く傾くと、根が傷んだり、リン酸などの重要な栄養素が吸収されにくくなったりする問題が生じます。苦土石灰は、この酸度を矯正すると同時に、不足しがちなカルシウムとマグネシウムを補給できるため、一石二鳥の資材と言えます。
苦土石灰を施す最も効果的な時期は、植え付けや元肥を施す1ヶ月以上前です。石灰は、土壌中で時間をかけてゆっくりと反応し、pHを変化させます。もし、肥料と同時に施してしまうと、化学反応を起こして窒素成分がガス化して失われたり、リン酸が吸収されにくい形に変化したりすることがあります。このような肥料成分の損失を防ぐためにも、必ず事前に施しておくことが大切です。
施用量の目安は、1平方メートルあたり100g~200g程度が一般的ですが、まずはご自身の畑の土壌酸度を測定キットなどで確認し、必要な量を判断するのが理想的です。苦土石灰をまいた後は、土とよく耕して混ぜ合わせることで、ムラなく効果を発揮させることができます。土壌のpHは一度調整すれば長期間安定するわけではないため、1~2年に一度、定期的に測定と施用を行うことで、ぶどうにとって最適な土壌環境を維持できます。
総括:計画的な施肥でぶどうの肥料不足は防げる
これまで解説してきたように、ぶどうの健全な生育には、肥料の種類ややり方、そしてタイミングが密接に関係しています。この記事で紹介したポイントを振り返り、ご自身のぶどう栽培に活かしていきましょう。
- ぶどうの肥料は化学肥料と有機肥料に大別される
- 化学肥料は即効性があり、有機肥料は土壌改良効果が高い
- 施肥の基本は元肥と追肥の2種類
- 元肥は植え付け前に、追肥は生育状況に合わせて行う
- 年間の施肥スケジュールはお礼肥、元肥、追肥の3回が基本
- 窒素過多は「つるボケ」や病害虫の原因となる
- 肥料焼けは根に深刻なダメージを与えるため規定量を守る
- 葉の黄化はマグネシウム欠乏のサインである可能性がある
- マグネシウム欠乏には葉面散布が即効性があり有効
- 初心者はバランスの良い緩効性化成肥料がおすすめ
- ぶどうを甘くするには果実肥大期のカリウムが鍵となる
- 鶏糞は発酵済みのものを、根から離して施用する
- 油かすは土壌を豊かにするが、虫やカビに注意が必要
- 苦土石灰は酸性土壌の中和とミネラル補給に役立つ
- 苦土石灰は肥料を施す1ヶ月以上前に施用する