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いちご肥料に鶏糞は最適?プロが教える使い方と注意点

家庭菜園でのいちご栽培、甘くて美味しい実をたくさん収穫したいですよね。その鍵を握るのが肥料ですが、「イチゴの肥料は何がいいのだろう?」と悩む方は少なくありません。特に、いちごの肥料に鶏糞を使うことについて、多くの方が関心を持っています。

「イチゴに鶏糞は使えますか?」という疑問はもちろん、「イチゴ用の肥料は何がいいですか?」と広く情報を探している方もいるでしょう。肥料の選択肢として、いちごの肥料に牛糞を使う方法もあり、「牛糞と鶏糞の肥料、どちらがいいですか?」と比較検討したいのは自然なことです。また、追肥の選択肢は多様で、イチゴの追肥に米ぬかや油粕、あるいは手軽な化成肥料を使う方法についても知りたいところです。

さらに、具体的な使い方として、鶏糞と石灰を一緒にまくとどうなるのか、いちごの肥料を与えるべき時期はいつなのか、といった専門的な疑問も湧いてきます。中には、100均で手軽に肥料を調達したいと考える方もいるかもしれません。最終的に、自分にとっておすすめのいちごの肥料が何なのか、はっきりさせたいはずです。

この記事では、これらのあらゆる疑問に答えるため、いちご栽培における鶏糞肥料の有効性から、失敗しないための具体的な使い方、他の肥料との比較まで、網羅的に詳しく解説していきます。

この記事のポイント

  • 鶏糞がいちご栽培に適している理由と栄養成分
  • 肥料焼けを防ぐ鶏糞の正しい使い方と施肥時期
  • 牛糞や油粕など他の肥料との違いと比較
  • 露地栽培とプランター栽培での効果的な活用法

いちごの肥料に鶏糞を使う基礎知識

  • イチゴの肥料は何がいいか解説
  • 「イチゴに鶏糞は使えますか?」への回答
  • 牛糞と鶏糞の肥料、どちらがいいですか?
  • いちご栽培で牛糞は肥料になるのか?
  • 鶏糞と石灰を一緒にまくとどうなる?
  • いちごの肥料をまくべき最適な時期

イチゴの肥料は何がいいか解説

いちごを元気に育て、たくさんの甘い実をつけるためには、肥料の選び方が非常に大切になります。いちごの生育には、特に「リン酸(P)」という栄養素が重要な役割を果たします。

リン酸は、植物の細胞分裂を助け、花を咲かせたり実をつけたりする働き(生殖成長)を促進する効果があります。このため、いちご用の肥料を選ぶ際は、リン酸の割合が多めに配合されているものを選ぶのが基本です。

一方で、「窒素(N)」は葉や茎を大きくする(栄養成長)ために必要な栄養素ですが、これが多すぎると問題が生じます。窒素過多になると、葉ばかりが不必要に茂ってしまい、肝心の実がつきにくくなる「つるボケ」という状態に陥りやすくなります。

したがって、肥料袋に記載されている「N-P-K(窒素-リン酸-カリウム)」の比率を確認し、P(リン酸)の数値がN(窒素)やK(カリウム)に比べて同等か、やや高くなっているバランスの肥料が、いちご栽培には適していると考えられます。

「イチゴに鶏糞は使えますか?」への回答

はい、鶏糞はいちご栽培に非常に適しており、多くの家庭菜園愛好家やプロの農家にも利用されている優れた有機肥料です。その理由は、鶏糞が持つ独特の栄養バランスにあります。

多くの鶏糞製品のNPK比は「3-7-3」前後となっており、前述のいちごが好むリン酸リッチな「山形」の理想的なバランスを持っています。このため、花付きや実付きを良くする効果が期待できます。

また、鶏は卵の殻を丈夫にするためにカルシウムが豊富なエサを食べているため、その糞には他の動物性有機肥料にはあまり含まれていないカルシウムが豊富です。カルシウムは植物の細胞壁を強くし、病気に強い株を育てるのに役立ちます。

さらに、価格が比較的安価でコストパフォーマンスに優れている点も大きなメリットです。ただし、独特の臭いや、与えすぎによる肥料焼けのリスクといった注意点も存在します。これらの特性をよく理解し、正しく使用することが、鶏糞を最大限に活用する鍵となります。市販品では、臭いを抑えた「刀川平和農園 平和 木酢液入り醗酵鶏糞」などが人気です。

牛糞と鶏糞の肥料、どちらがいいですか?

「牛糞と鶏糞、どちらがいちごに良いのか」という疑問はよく聞かれますが、これは「どちらが良い」というよりも「役割が違う」と理解するのが正解です。結論から言うと、肥料としての栄養効果を求めるなら鶏糞、土壌の物理的な改良を主な目的とするなら牛糞が適しています。

鶏糞は栄養価、特にリン酸が豊富で「肥料」としての側面が強い資材です。一方、牛糞は繊維質が非常に多く、土に混ぜ込むことで通気性や保水性を高め、土をふかふかにする「土壌改良材(堆肥)」としての役割が主となります。

以下の表で両者の違いを比較してみましょう。

特性 鶏糞 牛糞
主な役割 肥料 土壌改良材(堆肥)
NPK比(目安) 3-7-3(リン酸リッチ) 2-2-2(バランス型・低成分)
土壌改良効果 低い 高い(土をふかふかにする)
即効性 比較的早い 遅い
価格 安価 比較的安価
注意点 肥料焼け、臭い、石灰との同時使用NG 未熟なものは発酵熱やガス害のリスク

このように、両者は得意なことが異なります。いちご栽培においては、元肥として鶏糞を使いつつ、土作りとして完熟牛糞堆肥を混ぜ込むといった併用が、理想的な土壌環境を作るための有効な手段となります。

いちご栽培で牛糞は肥料になるのか?

前述の通り、牛糞は主に土壌改良材として使われますが、肥料成分を全く含まないわけではありません。そのため、「肥料として使えるか」という問いに対しては、「限定的ながら使えるが、それだけでは不十分」というのが答えになります。

牛糞の肥料成分は鶏糞に比べてかなり穏やかで、特にいちごの着果に重要なリン酸の含有量は少なめです。もし牛糞を主な肥料として使おうとすると、かなりの量を投入する必要があり、コスト面や土壌の物理性が変わりすぎる可能性があります。

むしろ、牛糞の価値は、豊富な繊維質による土壌団粒化の促進にあります。土がふかふかになることで、根が張りやすくなり、水はけと水もちのバランスが良くなります。これは、健康ないちごの株を育てる上で非常に重要な要素です。

したがって、牛糞は「肥料」として頼るのではなく、あくまで「土を良くするサポーター」と位置づけ、鶏糞や化成肥料といった主力の肥料と組み合わせて使うのが最も効果的な活用法と言えます。

鶏糞と石灰を一緒にまくとどうなる?

鶏糞と石灰(特に消石灰や苦土石灰)を同時に土に混ぜ込むことは、絶対に避けるべきです。もしこれらを同時に施用すると、化学反応によって鶏糞の重要な栄養素が失われてしまいます。

この現象の理由は、鶏糞に含まれるアンモニア態窒素にあります。鶏糞が土の中で分解される過程でアンモニアが発生しますが、ここにアルカリ性の石灰が混ざると、アンモニアがガス化して空気中に逃げてしまいます。これを「アンモニア揮散(きさん)」と呼びます。

結果として、植物の葉や茎を育てるために不可欠な窒素成分が、根に吸収される前に失われてしまうのです。これでは、せっかくの肥料効果が半減してしまい、非常にもったいないことになります。

これを防ぐための正しい手順は、時間差を設けることです。

  1. まず、植え付けの3~4週間前に、土壌の酸度調整のために苦土石灰などをまき、土とよく耕しておきます。
  2. その後、1~2週間ほど期間をあけてから、元肥として鶏糞を施用し、再度土とよく混ぜ合わせます。

このひと手間をかけることで、それぞれの資材が持つ効果を最大限に引き出すことができます。

いちごの肥料をまくべき最適な時期

いちごの肥料は、一度にまとめて与えるのではなく、適切な時期に適切な量を与える「分割施肥」が基本です。施肥のタイミングは、大きく分けて「元肥(もとごえ)」と「追肥(ついひ)」の2つがあります。

元肥の時期

元肥は、苗を植え付ける前に、あらかじめ土壌に混ぜ込んでおく肥料のことです。これは、いちごが根を張り、初期生育するための土台となる栄養を確保する目的があります。 施すタイミングは、苗の植え付けの2~3週間前が目安です。鶏糞のような有機肥料は、土の中で分解されてから効果を発揮するため、事前に土に馴染ませておく時間が必要になります。特に発酵鶏糞は土中で発酵熱を持つことがあるため、植え付け直前に施すと根を傷める原因になります。

追肥の時期

追肥は、いちごの生育状況を見ながら、追加で与える肥料です。株の成長や開花、結実の各段階で不足しがちな栄養を補います。一般的な10月頃に植え付ける「秋植え」の場合、追肥のタイミングは以下の3回が目安となります。

  1. 1回目の追肥:11月中旬頃 植え付けた苗が土に根付き(活着し)、新しい葉が展開し始める頃に与えます。本格的な冬を迎える前に株を充実させることが目的です。
  2. 2回目の追肥:2月上旬~中旬頃 冬越しを終え、気温が上がり始めて株が再び成長を始める頃に与えます。春からの開花・結実に向けたエネルギーを補給します。
  3. 3回目の追肥:4月上旬頃 次々と実がなり始める時期です。実の肥大による株の消耗が激しくなるため、肥料切れを防ぐために必要に応じて与えます。

これらの時期はあくまで目安です。葉の色が薄くなったり、生育が鈍ったりした場合は、適宜追肥を検討するなど、株の状態をよく観察して調整することが大切です。

いちご栽培で鶏糞肥料を使いこなす応用編

  • イチゴの追肥に油粕を使うポイント
  • イチゴの追肥に米ぬかを利用する方法
  • いちごの追肥で化成肥料を使う注意点
  • 100均で買えるいちごの肥料はある?
  • おすすめのいちごの肥料と選び方
  • 総括:いちごの肥料に鶏糞を使うポイント

イチゴの追肥に油粕を使うポイント

油粕は、菜種などから油を搾った後の粕で、古くから使われている代表的な有機質肥料です。追肥としても利用できますが、いちごに使う際にはその特性を理解しておく必要があります。

油粕の最大の特徴は、窒素成分が豊富であることです。このため、与えすぎると葉や茎ばかりが茂る「つるボケ」を引き起こし、花や実がつきにくくなるリスクがあります。したがって、油粕を追肥に使う場合は、規定量を守り、少量ずつ施すことが鍵となります。

また、油粕はリン酸やカリウムの含有量が比較的少ないため、これだけを使い続けると栄養バランスが偏る可能性があります。リン酸を補う骨粉などを混ぜて使うか、鶏糞や化成肥料など、バランスの取れた肥料と併用するのがおすすめです。

使用する際は、発酵処理が済んだ「発酵油粕」を選ぶと良いでしょう。未発酵のものは土の中での分解に時間がかかり、その過程で根にダメージを与えることがあるためです。発酵油粕は分解がスムーズで、効き目も穏やかなので、追肥に適しています。

イチゴの追肥に米ぬかを利用する方法

米ぬかは、玄米を精米する際に出る粉で、ビタミンやミネラル、リン酸などを豊富に含む優れた有機物です。これをいちごの追肥として利用することも可能ですが、いくつか注意点があります。

最も重要なのは、生の米ぬかをそのまま大量にまかないことです。生の米ぬかは、土の中で微生物によって急激に分解される際、発酵熱やガスを発生させ、いちごの根を傷める可能性があります。また、カビやコバエなどの病害虫の原因になることもあります。

このため、米ぬかは「ぼかし肥料」として一度発酵させてから使うのが最も安全で効果的です。米ぬかに油粕や鶏糞、土などを混ぜて水分を加え、数週間から数ヶ月かけて発酵・熟成させることで、植物が吸収しやすい状態の安全な肥料になります。

もし手軽に使いたい場合は、株元から少し離れた場所に、ごく少量を土の表面にパラパラとまき、軽く土と混ぜ合わせる程度に留めましょう。米ぬかは土壌の微生物を活性化させ、土を豊かにする効果も期待できます。

いちごの追肥で化成肥料を使う注意点

化成肥料は、鉱物などを原料に化学的な方法で製造された肥料で、成分が明確で即効性があるのが特徴です。手軽で使いやすいため、いちごの追肥にも広く利用されますが、有機肥料以上に注意深い管理が求められます。

最大の注意点は「肥料焼け」です。化成肥料は成分濃度が高く、水に溶けやすいため、一度に大量に与えたり、根に直接触れたりすると、浸透圧の作用で根の水分が奪われ、枯れてしまうことがあります。製品の袋に記載されている規定量を必ず守り、むしろ最初は少なめから試すくらいが安全です。

施肥する際は、株元に直接まくのではなく、株から少し離れた場所(プランターなら縁のあたり)にパラパラとまく「置き肥」をします。その後、軽く土と混ぜ合わせると効果的です。

また、液体タイプの化成肥料(液肥)も便利です。水で薄めて水やり代わりに与えることができ、即効性が非常に高いため、葉の色が薄いなど、肥料切れのサインが見えたときに素早く対応できます。「ハイポネックス原液」などは代表的な製品で、規定の希釈倍率を厳守して使用することが大切です。

100均で買えるいちごの肥料はある?

はい、ダイソーやセリアといった100円ショップでも、家庭菜園で使える肥料を購入することが可能です。少量で園芸を楽しみたい初心者の方や、少しだけ肥料を試してみたいという方にとっては、便利な選択肢となり得ます。

店頭に並ぶ商品は店舗や時期によって異なりますが、一般的には以下のような肥料が見られます。

  • 小袋の化成肥料:草花用や野菜用として、バランスの取れた粒状の化成肥料が販売されています。
  • 発酵油かす:有機肥料の定番である油かすも、小袋サイズで手に入ることがあります。
  • 液体肥料:薄めて使うタイプの小さなボトルの液肥が置かれていることもあります。

ただし、鶏糞や牛糞といった堆肥・有機肥料は、その重量やかさ、臭いの問題からか、100円ショップで見かけることは少ないかもしれません。

100均の肥料を利用するメリットは、何と言ってもその手軽さとコストの低さです。一方で、ホームセンターなどで販売されている大袋の商品に比べると、グラムあたりの単価は割高になる傾向があります。栽培する株数が多い場合や、本格的に取り組む場合は、園芸店やホームセンターでの購入が結果的に経済的です。

おすすめのいちごの肥料と選び方

いちご栽培に「これさえ使えば完璧」という万能肥料は存在せず、ご自身の栽培スタイルや目的に合わせて選ぶことが成功への近道です。ここでは、目的別におすすめの肥料の選び方を紹介します。

手軽さと栄養バランスを重視するなら「鶏糞」

有機肥料を使いたいけれど、難しく考えたくないという方には、やはり鶏糞がおすすめです。リン酸が豊富な理想的な栄養バランスで、これ一つで元肥から追肥まで対応できます。臭いが気になる場合は、発酵処理や炭化処理が施された製品を選びましょう。

 

じっくり土作りからこだわる有機栽培なら「堆肥+複合的な有機肥料」

時間をかけてでも、土壌環境そのものを良くして美味しいいちごを作りたい場合は、土作りの段階で完熟牛糞堆肥や腐葉土を十分にすき込みます。その上で、元肥に鶏糞を、追肥には油粕や骨粉、米ぬかぼかしなどを生育状況に合わせて使い分けることで、より深みのある味わいが期待できます。

とにかく手軽さと即効性を求めるなら「化成肥料・液体肥料」

プランター栽培などで手軽に楽しみたい方や、肥料切れのサインにすぐ対応したい場合は、化成肥料や液体肥料が便利です。特に液体肥料は、水やりと同時に施用できるため手間がかかりません。ただし、有機栽培にこだわる方には向かず、与えすぎのリスク管理は常に必要です。

最終的には、これらの肥料の特性を理解し、例えば「元肥は鶏糞と牛糞堆肥、追肥は手軽な液体肥料」というように、複数を組み合わせて使うのが最も賢い方法と言えるでしょう。

総括:いちごの肥料に鶏糞を使うポイント

この記事で解説した、いちご栽培における肥料、特に鶏糞の効果的な使い方と注意点について、最後に重要なポイントをまとめます。

  • いちごの肥料にはリン酸が多いものが適している
  • 鶏糞はリン酸が豊富でいちご栽培におすすめの有機肥料
  • 鶏糞のNPK比は花と実をつけるのに理想的な山形バランス
  • 他の動物性有機肥料に少ないカルシウムも含む
  • コストパフォーマンスが高く家庭菜園で使いやすい
  • 肥料として考えるなら鶏糞、土壌改良なら牛糞と使い分ける
  • 鶏糞と石灰の同時使用は窒素成分が抜けるため避ける
  • 施肥は植え付けの2~3週間前から準備を始める
  • 肥料焼けを防ぐため鶏糞は土とよく混ぜ込む
  • 発酵鶏糞は効果が穏やかで持続性があり、乾燥鶏糞は即効性がある
  • 臭いが気になる場合は発酵鶏糞や炭化鶏糞を選ぶ
  • 追肥は生育状況を見ながら11月、2月、4月頃に行う
  • 追肥は根に直接触れないよう株元から離して施す
  • 油粕や化成肥料など他の肥料と併用する際は窒素過多に注意
  • プランター栽培では土の量が少ないため施肥量を控えめにする

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